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監修:国立がん研究センター中央病院
清水 研 先生
宮部治恵さん

前向きになれない日々、友人との出会いと別れで
「今を楽しんで自分らしく生きる」ことの大切さに気づく

宮部治恵さん(48歳)
発症・告知 34歳/子宮頸がん、直腸がん
取材日(2017年6月21日)

「がん」になったこと以上に「子どもを産めなくなること」がつらかった

宮部治恵さん 子宮頸がんだった私は、がんの告知と同時に子宮と卵巣を摘出することを告げられました。夫も私も子どもが大好きで、「たくさん欲しいね」と話していた頃だったので、がんになったこと以上に子宮を取らなければいけないことがものすごくつらかったです。

当時はがんについての知識もまったくなく、「他に治療方法はないんですか?」と聞くことも思いつかず、先生に言われるがまま手術を受けました。

今では、がん患者さんの心のケアも重視されていますが、当時はとにかく治療が優先されていて、手術後に運ばれたのは、赤ちゃんを産んだばかりのお母さんの隣のベッドでした。そのときは、1時間おきにお母さんの母乳を飲みに病室に来る赤ちゃんの泣き声が耐えられませんでした。

夫は、私が元気ならそれでいいと言ってくれましたが、子どもを産めなくなったこともあり、家族との距離がひらいていき、結局、離婚することになりました。

2度目のがんに「自分はがんで死ぬんだ」とあきらめの心境に

その後、新たに直腸に大きながんが見つかり、「このまま手術ができなければ1年ぐらい」と余命宣告を受けたんです。そのとき、「やっぱり私はがんで死ぬんだな」とあきらめの境地になりました。離婚して、ひとりで生活しながら治療を続けていくのはすごく大変で「自分なんてこの世にいなくてもいいのに」と考えたことが何度もありました。幸いにも手術ができてがんを取ることができたのですが、前向きな気持ちにはなれませんでした。

そんなときに、がん患者さんや家族を支援する「リレー・フォー・ライフ」の活動を知り、自分も関わってみたいと思いました。まず、参加するためには体力をつけなくちゃと思い、院内を1日2万歩ぐらい歩くことを続けているうちに、他の患者さんや看護師さんたちと話すようになり、少しずつ気持ちが明るくなっていきました。この「リレー・フォー・ライフ」に参加して、自分と同じような思いをしている人、しかももっと大変な状況にある人が大勢いることに衝撃を受け、もっと日々を笑顔で過ごさなきゃと思ったものの、すぐには前向きになれず、浮いたり沈んだりを繰り返していました。

周りの人々にどれだけ支えられていたかを実感

宮部治恵さん 私は職場や人の縁にはとても恵まれていました。抗がん剤治療の影響で体調が悪く、迷惑をかけるからと退職を願い出たときは、「何言ってるんだ。離婚もしてこれから治療でお金がかかるのに、仕事やめてどうするんだ」と逆に叱られ、治療をしながら仕事を続けさせてもらうことができました。

また、2度目のがんの手術後、落ち込む私を見かねた看護師の友人が、私の好きな有名K-1格闘家に、知り合いでもないのに「励ましてほしい人がいる」と手紙を書いてくれたのです。そしたら後日、実際にご本人から連絡が来て、普通であれば会うなんて考えられない人にお会いすることができたんです!すごく驚きましたし感激しました。そこでその手紙も見せてもらって、こんなに心配してくれる友人がいるのに自分は何をしているんだと我に返りましたね。自分のことばかり考えていて、周りが全く見えてなかったんですね。

「リレー・フォー・ライフ」への参加をきかっけに、新たな友人も増えました。ある友人は「お互いがんが治ったんだから元気になろうね」と笑顔で話しかけてくれ、私も彼女みたいに笑えるようにならなきゃと励まされました。そんな矢先、突然、彼女が不慮の事故で亡くなってしまったのです。自分はずっと、がんで死ぬことを恐れていたけど、がんとは関係なく、いつ何があるかわからないんだと気づかせてくれました。「くよくよ悩んでいる時間がもったいない!今を楽しんで自分らしく生きていこう。」そう思えるようになったんです。

つらい日々があったからこそ前向きな自分になれた

私はその後、新たな出会いに恵まれ、結婚しました。自分は子どもを産めないし、もう結婚しないと決めていたので、彼と出会ってすぐに、がんのこと、子どもが産めないことを話しました。でも、彼は「だけんなん(だから何)?」と普通な反応。すごく救われました。彼の両親も「あなたが元気ならそれでよかよ」と温かく迎えてくれて、結婚を決意しました。

キャンサーギフト(がんがくれた贈り物)という言葉があります。前を向けるようになるまで長い時間がかかりましたが、新しい結婚生活も、今を楽しんで生きようという気持ちも、がんになったから得られたことです。つらい時間を乗り越えた先には幸せもある。がんになっても、楽しむこと、自分らしく生きて幸せになることをあきらめないでほしいと思います。

子どもたちに「命の大切さ」を伝えたい

宮部治恵さん 私は今「NPO法人キャンサーサポート」の代表として、子どもたちへのがん教育に力を入れています。小・中・高校に出向いて行う授業では、医療者が「正しいがんの知識」を伝え、がん経験者が体験談を語り、「命の大切さ」を伝えます。授業を受けた子どもたちの中には、いじめに遭っている子や、自殺を考えていた子もいました。それでも授業後には「いのちの大切さ」「時間の大切さ」「人の温かさ」がしっかり伝わっているんです。私はこの活動が、子どもたちの「未来」につながってほしいと願いながら、これからも笑うて生くばい!