Q5がんとわかったときに、希望を見失い、これからどうやって生きていこうかと悩みました。
A怒りや悲しみなどの感情は、傷ついた自分の心を癒してくれます。次に進むために、大いに絶望し、負の感情に蓋をしないでください。
質問者さんは、がんになる前にどのような希望を持っていらっしゃって、そしてどのような事情から、その希望を失われたのでしょうか。きっと簡単ではない状況なのだと想像します。
がんになることで、様々な希望を失う方がいらっしゃると思います。がんの病状から思い描いていた10年先の未来を諦めた方、子供を生むことを諦めた方、肛門から排泄することを諦めた方、今までの仕事を諦めた方、などなどなど。私も多くの方のお話を伺ってきましたが、その経験から思うこととしては、希望を見失った(=絶望した)としても、みなさんいずれまた何かに向かって歩き出されようとされることです。なので、今この言葉は質問者さんには届かないとは思いますが、未来の予告編として、「あなたはきっと歩き出していると思いますよ」とお伝えしたいです。
では、この状況と向き合い、次に進むためにどうしたらいいか。それは、大いに絶望し、負の感情に蓋をしないことです。自分ががんになったということに理不尽さを感じるのであれば、怒りを押し込める必要はありません。自分の大切なものを失ったとしたら、誰だって悲しくてしょうがないと思います。実は怒りや悲しみなどの感情は、傷ついた自分のこころを癒してくれる働きがあります。ひとり忍び泣くことも悪くはないでしょうが、できれば自分の悩みを打ち明けられる人に思いっきり気持ちを話してみるほうが良いでしょう。家族や友人には心配をかけたくないという方は、医療者に相談してみてもよいと思います。
怒りや悲しみの感情はトーンダウンしたとしても完全には止まないかもしれません。しかし、「起こってしまったことは変えられないのだ」というようなあきらめのような考えが出てきたとき、歩きだしてみようという気持ちが少しずつ出てくるのだと思います。
- 答えた人
- がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
- 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
2024年2月更新