Q8わけもなく急な不安に襲われたときは?
A不安はなくすのではなく、上手に付き合うのがよいと考えられています。
不安という感情は必ずしも悪いものではなく、不確実な脅威に対して、「気をつけなさい」というメッセージです。不安を感じすぎてもつらいですが、不安が少ない人は向こう見ずなことをして自分を危険にさらしてしまうことがあります。なので、不安はなくすのではなく、上手に付き合うのがよいと考えられています。
「わけもなく」と書いておられますが、実際には、こころの水面下に潜んでいた不安が、時々顔を出すのでしょう。この時の対策はふたつの方向があります。
ひとつは応急処置に近いですが、もう一度水面下に押し込める方法です。気ぞらしと言ったりしますが、友達と話したり、病気とは関係ないテレビを見たりしているうちに、また不安は水面下に潜っていくでしょう。ただ、なくなるわけではないので、またどこかで顔を出すでしょう。
もうひとつのやり方は、少しエネルギーがいりますが、自分のこころと向き合うことです。自分はどんなことを恐れているのだろうと、思ったこと、考えていることを断片的でもいいのでノートに書きだしていくと、「ああ自分はこんなことを恐れているのだな」と気づくかもしれません。自分一人でやるよりももっといいのは、信頼できる人に話を聞いてもらうことで、言葉のキャッチボールをする中で、自分のこころに気づいていきます。
不安の正体が見えてきたら、そのことに対して自分が対処できることをしていきましょう。例えば「がんの再発」に対する不安であれば、当たり前かもしれませんが、最善の治療を受けて、経過観察のための受診をすることは自分の努力でできます。ただ、そののちに再発しないかどうかは、結果を待つしかありません。コロナ感染に対する不安だったら、マスクをするなどの感染予防行動を自分の努力で心掛けられますが、どうしても外出しなければならないときに絶対感染しないとは言い切れません。
この場合、「この不安は付き合っていくしかないな」といい意味であきらめてしまうと、不安はなくなりはしませんが、徐々にそのことに慣れていくと思います。
- 答えた人
- がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
- 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
2024年2月更新