Q2つらい気持ちが続くときは?

A前向きになれない自分を責める必要はありません。つらい気持ちから抜け出せないときは、精神腫瘍科医や臨床心理士などが協力します。

落ち込んでいる自分、つらい気持ちが続いている自分を責める必要はありません。明るく前向きでなくてはいけない、落ち込んでいる自分が情けないなどと考えてしまいがちですが、つらい気持ちから抜け出せなくても、まずは「それぐらい自分は悲しいんだ、前を向くための準備には時間が必要なんだ」と考えてください。

もし「これから自分はどうしたら良いのかわからない」というように、方向性がわからなくなった場合、ひとつの方法として生い立ちから今までの人生を振り返ることが役に立ちます。自分が大切にしてきたものが思い出され、進みたい方向が見えてくることがあります。

精神的な疲労が強くなっているサインとして、①考えがどんどん悲観的になる、②何事に対してもやる気が出ない、③眠れない、④食欲がないというものがあります。そのような場合は精神腫瘍科を受診してください。精神腫瘍科を受診し、なぜそういう気持ちが続くのか考えてその理由を少しずつ整理したり、薬の助けをうまく利用することにより、気持ちが軽くなることがあるかもしれません。

答えた人
がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

体験者エピソード

体験談は、あくまでその方個人の感想・体験です。すべての人に当てはまるものではありません。年齢・地域は取材当時のものです。

花木裕介さん

「転んでもタダでは起きない」精神で、強気に考えてみました

【花木 裕介さん(39歳)発症38歳/中咽頭がん】

気持ちの切り替えは、なかなか難しいですね。でも、弱気になるとどんどんへこんでいきそうだったので、なんとか前向きになろうと、無理やりにでも「治療をしなければ」という使命感を自分で作ろうとしていました。私の場合は書く仕事をしていて、本を出版したこともあったので、病気になったことで「書くネタができた。乗り越えればまた書ける」と考えるようにしました。そう思うことで自分に良いプレッシャーをかけ、治療に臨む意欲が持てたと思っています。

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小磯 朋子さん

誰にも言えなかった本音を吐き出せたら、気持ちが楽になりました

【小磯 朋子さん(32歳)発症24歳/子宮頸がん】

がんが再発したとき、「余命1~2年」と宣告されました。そのときに「1~2年楽しく生きて、それで人生が終わるならそのほうが楽かもしれない」と考えてしまったのです。そのため、その後の治療がうまくいって元気になることができたのに、「生きる」希望を捨ててしまったので、その現実を素直に喜べませんでした。元気になってしまい、これからどうやって生きていこう…と治療後は自宅でふさぎ込んでいました。

どうにもならない思いと共に家に引きこもるという最悪な日々が続きました。何もしない毎日、何も思わない、感じない、喜怒哀楽を無くしてしまいました。やるべきことがなく、なぜ自分は生きているのか…そんな思いになる毎日でした。

しかし、心配してくれる友人の存在に気づいたとき、どん底にいても心のどこかで思っていた、「変わりたい、なんとかしたい!」という気持ちになることができました。その気持ちに気が付くまでに多くの時間と葛藤がありました。

治療中にお世話になり、「つらくなったらいつでも連絡して」と送り出してくれた看護師さんに電話をかけて、生きられなくても良いと思っていたのに生きてしまったこと、どうしていいかわからず苦しいこと、どうにかしたいと思っていることを正直に話しました。

電話をするまでもとても苦悩し、電話をかけようと携帯を手にとっても行動に移せない自分に苛立って…。電話をかけられない自分を誰も理解してくれない。そんな時も苦しかったです。

電話をしたときには、それまで誰にも言えなかった本音を吐き出せたことで、とても気持ちが楽になりました。

たとえ直接的な解決法を示してもらえなかったとしても、ただ話すだけ、聞いてもらえるだけでこんなに楽になるのかと思いました。それからは、家族や友人にも、本当の気持ちを話せるようになり、少しずつ前向きになれました。

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  • 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

2024年2月更新