Q4採用面接でがんの病歴を話すべきでしょうか?

A病歴を伝えることは義務ではありませんが、自分ができる範囲を正直に、堂々とアピールしてみましょう。

自分からがんの病歴を伝える必要はありません。採用者が知りたいことは、病気についてではなく、提示されている職務をこなせる能力があるかどうかです。

職務の一部がこなせない可能性がある場合や、業務上配慮してほしいことがあれば、面接時に必要最低限を伝えておくほうがいいこともあります。

どうしても「できないこと」ばかり気にしてしまいがちですが、「今の自分ができる範囲」を正直に伝え、「がんを罹患したがここまでできる」と堂々とアピールしてほしいと思います。

答えた人
国立がん研究センター中央病院 相談支援センター 宮田 佳代子さん

関連ファイル がん情報サービス「がんの冊子 がんと仕事のQ&A(第3版)」Web版
(閲覧日:2024年2月1日)

体験者エピソード

体験談は、あくまでその方個人の感想・体験です。すべての人に当てはまるものではありません。年齢・地域は取材当時のものです。

柴 美穂さん

病気のことを黙って受けた19回目の面接で採用。採用後に打ち明けると、暖かい言葉をいただけた

【柴 美穂さん(27歳)発症20歳/慢性骨髄性白血病】

告知を受けたときは働いていなかったのですが、高い薬代を支払い続けることを考えて仕事を探し始めました。最初のうちは面接で病気のことを伝えていましたが、不採用の連続。中には面接官から「今の髪の毛は地毛なの?かつらなの?」と聞かれたり、「先が短いのなら、仕事なんかせずに娘さんといてあげなさいよ」と言われたりすることもあって、心が折れそうになりました。

「正直に言ったら落ちるかもしれない」という不安から、19回目の採用面接では病気のことを黙っていたのですが、後日採用の電話をいただいて心苦しくなり、がんであることを打ち明けました。「今になってこういう話をして申し訳ありません」と伝えると、相手の方は電話口で泣きながら「そんな気にせんでいいよ、病院にも行っていいし、体がきつかったら言ってね」と言ってくれました。本当にうれしかったです。その日はたまたま私の誕生日で、「誕生日おめでとう」と言葉をかけてくださったときは、思わず号泣してしまいました。嫌な思いもしましたが、頑張ってきてよかったと思いました。

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菅原祐美さん

配慮をお願いしたいことと、できることを具体的に伝えた

【菅原祐美さん(33歳)発症29歳/乳がん】

罹患したときは保育士として働いていました。治療後、パートとして元の職場に戻ったのですが、患者会の活動にも取り組みたいという思いがあって、2年ほど前に別の保育園に転職しました。

面接では、乳がんを患って現在も治療を継続していること、平日の通院や重いものを持てないことへの配慮をお願いしました。「もし災害が起きたら、お預かりしているお子さんの命が最優先ですので、子どもを抱えて走ります。でも避難訓練の時には重いものを持つ役目は免除して下さい。そのぶん違うところでがんばります」と、できること、できないことを具体的に伝え、理解してもらいました。

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古谷 浩さん

すべてを話して就職活動。それでも採用してくれた会社で、体調に配慮してもらいながら自分にできる仕事を

【古谷浩さん(43歳)発症31歳/性腺外胚細胞腫】

僕はすべてをオープンにして就職活動をしました。言わなくてもいいらしいんですけど、でもときどき休まないといけないし、隠すのも嫌だったので。僕は患者会の代表をしていたし、履歴書にも「患者会代表」と書きましたし、どういう活動をしているのかという話をアピールしました。

それで、採用してもらった今の会社に再就職することができました。最初はフルタイムで勤務していたんですが、体力がやっぱりないんです。会社から「倒れられたほうが困る」と言われて、時短勤務で16時までの勤務にしてもらっています。病気のことを分かってくれているので、本当に理解があります。同じ職場の人はみんな知っているので、「通院で休みます」「おう、分かった」と普通に言ってくれます。

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  • 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

2024年2月更新