Q4高校生の場合、勉強が遅れないようにするために利用できる支援制度はありますか?
A高校生向けの「院内学級」はとても少ないですが、「訪問教育」を利用することもできます。
入院中の子どもたちの学習を支援するために「院内学級」を設けている病院もありますが、ほとんどは小・中学生が対象で、高校生向けの院内学級はとても少ないのが現状です。
「訪問教育」は、障がいや病気のため、また入院のために、毎日学校に登校することが難しい児童・生徒に対して、学校から教員が訪問し、家庭や病院、施設などで個別に授業を行うもので、高校生も利用できる制度です。しかし、特別支援学校に転籍することが条件になりますので、これまで在籍していた高校を一旦退学しなければいけません。高校は義務教育ではないので、復学の際に転入試験を求められる場合もあり、実際には活用しにくい一面もあります。
高校は、定められた教育課程の必要単位を履修することで、進級や卒業が認められるため、留年を避けるためにも、できるだけ学業を継続することが大切です。現在、ICTを活用するなどして、入院中・治療中の高校生の教育支援の取り組みが始まっています。親御さんや在籍している高校の先生ともよく相談して、病院の相談支援センターの相談員やスクールカウンセラーも一緒に、どうしたいのか、どんな方法があるのかをみんなで考えていきましょう。
- 答えた人
- ソーシャルワーカー、社会福祉士・精神保健福祉士 樋口 明子さん
体験者エピソード
体験談は、あくまでその方個人の感想・体験です。すべての人に当てはまるものではありません。年齢・地域は取材当時のものです。
病気の上に留年というペナルティまでもらうのは辛い。誰もが当たり前に進級できるような制度を設けてほしい。
【米井 慶太郎さん(17歳)発症16歳/小児慢性骨髄性白血病】
入院していたのは小児医療センターだったので院内に特別支援学校があり、小中学生を対象とした院内学級はありましたが、高校生は対象外でした。院内でテストを受けても点数として認められず、テスト期間中だけ治療のスケジュールを調整してもらってテスト受けたり、支援学校のみなさんが学校と連携して課題を持ってきてくれたりしましたが、出席日数には認められませんでした。
僕の場合は、私立のクラス担任と部活顧問の先生が校長先生にかけあってくれて、特例で進級することができました。病気をしただけでも辛いのに、それで留年することになるのは辛すぎます。進級できたことで「これでやっと治療を頑張れる」と嬉しかったのですが、「特例」ということでどこか後ろめたい気持ちもありました。
公立だとか私立だとか関係なく、病気になってもこれを満たせば出席日数と認められて進級できる、といった明確な基準が制度としてできればいいと思います。
院内学級で学べたことで、勉強の遅れへの焦りがやわらぎました
【松井基浩さん(31歳)発症16歳/悪性リンパ腫】
幸いなことに、僕が入院した病院には院内学級があり、元の高校から転校して院内学級で勉強しました。もちろん、元の高校と全く同じペースで学ぶことは無理でしたが、元の高校で学んでいた内容に合わせた勉強ができたことで、焦りや不安はやわらぎました。退院後は元の高校に復学しましたが、担任の先生の働きかけのおかげで院内学級での単位が認められ、留年せずにすみました。
僕は治療中も就学環境に恵まれていましたが、本来は誰もが同じように勉強できる環境が整うべきで、院内学級などの学習支援制度が広く普及することを期待しています。
- 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
2024年2月更新