Q1結婚したい相手には、いつどのように病気のことを伝えればいいでしょうか?
A伝えられるときに、伝えられる範囲で。
明確な答えや決まりはありませんから、自分の中で伝えようと思えるときに伝えられる範囲でよいと思います。パートナーが詳しく説明を聞きたいのであれば、一緒に主治医から説明を受けることも一つの方法かもしれません。
- 答えた人
- 国立がん研究センター中央病院 相談支援センター 宮田 佳代子さん
体験者エピソード
体験談は、あくまでその方個人の感想・体験です。すべての人に当てはまるものではありません。年齢・地域は取材当時のものです。
「病気があっても楽しくやっていければいいよ」の一言がうれしかった
【柴 美穂さん(27歳)発症20歳/慢性骨髄性白血病】
彼に出会ったとき、私はバツイチのシングルマザー。これだけでも重いのに病気という爆弾も抱えているわけですから、「最初に全部言っておかなければ」と思い、付き合い始めてすぐに話しました。話し終わると、彼は泣きながら一言、「死ぬの?」と。そんなに深刻な状況ではなく、薬を飲んでいれば大丈夫だと説明すると、「じゃあいいよ。俺は子どもが好きだし、3人で楽しいことやっていけばいいじゃん」と言ってくれて、「この人なら一緒になって楽しいかもしれん、病気のことをあまり考えずに生活できるかもしれん」と思いました。
結婚して彼が家事を手伝ってくれるようになったので、体力的にすごく楽になりましたね。私が落ち込んでいるときは気晴らしにカラオケに誘ってくれて、娘ともよく遊んでくれています。良い人とめぐり会えて本当にラッキーだと思っています。
恋愛に臆病になっていましたが、周囲の人のおかげで一歩を踏み出すことができました
【小磯 朋子さん(32歳)発症24歳/子宮頸がん】
私は今まで、病気のことで恋愛に対してとても臆病になっていました。普通の女の子とは違う…。そう自分で決めつけていました。病気があること、子どもが産めないこと、体が弱いこと、色々な事を話さなければいけない。そのハードルが高すぎて恋愛する気持ちにはなかなかなれず、「一人での人生でもいいや」とあきらめていました。
しかし、知人の紹介で今の彼と出会いました。私の病気のことをよく知っている方が間に入ってくださったおかげで、自分からでなく周りからなんとなく私ががんを患っていることを彼に伝えてくれました。そのため、自分から伝えるというハードルを周りが下げてくれました。この環境をつくってくれたことは、私にとって大きな一歩を踏み出す勇気になりました。それがなかったら、自分から病気を伝えて、病気があるのはちょっと…と断られてしまったとき、「そんな現実を受け入れられない」、「自分は傷つきたくない」と、そう思ってしまいます。
今まで恋愛から遠ざかっていたのも、そんな気持ちを体験したくなかったからだと思います。私は周りのサポートがあってこそ、その一歩を踏み出すことができました。そして、事前に自分の病気の事を知ってくれていたので、話をした時も驚いてはいましたが受け入れてくれたのかもしれません。
今は、二人の人生を前向きに考えてくれています。
「子どもを産めない」ということがあったので出会ってすぐに伝え、すべてを理解してくれた今の夫と結婚
【宮部 治恵さん(48歳)発症34歳/子宮頸がん、直腸がん】
子どもを産めないということをすごく気にしていたので、こんな私を嫁にもらってくれる人なんかいるはずがないと思っていました。だから、彼と出会ってすぐに、がんのことはちゃんと話しておかなければと思って、すべて話しました。
でも、意外にも「だから何?」という普通の反応で、「俺もいつ(病気に)なるか分からない」と言われて、びっくりしました。彼のご両親にも、私は子どもを産めないということをちゃんと伝えたら、「あなたが元気なら、子どもなんてよかよ」と言ってくれました。涙が止まらなかったことを覚えています。そして結婚を決意しました。
- 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
2024年2月更新