Q2家族が、気持ちの整理ができないときは?

Aご家族にこそ、誰かに気持ちや思いを打ち明けてほしいと思います。

子どもが病気になって動揺しない親はいません。心配や不安は当然のことです。病気や治療のこと、お金のこと、思春期のお子さんとの接し方、ご本人の意思と親御さんの希望が違ったときなど、ご本人以上に悩まれている親御さんもいらっしゃいます。

「本人の意思を尊重しなきゃいけない」とか「親が勝手に相談したら本人が嫌がる」という気持ちがあって、ご本人にも他のご家族にも病院関係者にも話せないこともありますよね。そんなときには第三者の立場である、がん相談支援センターや患者支援団体の相談窓口や精神腫瘍科などに、気持ちを打ち明けにきてください。具体的な相談でなくてもかまいません。

「自分のことを知らない間に他の人に相談された」と嫌がられることもあるかもしれませんが、そんなときは「私が落ち着きたいから、私のために相談にいく」とはっきりと伝えてはどうでしょうか。本人には本人なりの、親には親なりの悩みがあって当然だと思います。同じ経験をした親御さん同士での交流も有用なこともあるようです。親の会や患者家族会もありますので、がん相談支援センターなどで情報を得てください。

答えた人
ソーシャルワーカー、社会福祉士・精神保健福祉士 樋口 明子さん

体験者エピソード

体験談は、あくまでその方個人の感想・体験です。すべての人に当てはまるものではありません。年齢・地域は取材当時のものです。

岡本 拓磨さん

自分だけでなく家族も経験者からの励ましで少しずつ前向きになれた

【岡本拓磨さん(29歳)発症28歳/食道胃接合部がん】

妻は、僕ががんと分かってからしばらくは僕以上にネガティブに考え、落ち込んでいました。そんな頃、僕は母の知人のがんを経験された方に出会い、その方が非常に明るくてプラス思考なので、徐々に前向きに、明るく考えられるようになっていきました。妻も実際にがんを経験した人からの「がんになっても大丈夫よ。私なんか元気でやっているでしょ?」という力強い言葉や励ましのおかげで、徐々に前向きになっていきました。

両親は、僕の前では心配しているそぶりはあまり見せません。でも、その知人の影響や、僕や妻がだんだん前向きに考えられるようになって明るくやっているので、それを見て前向きに考えられるようになったのではないかなと思います。

家族にとっても、がん経験者が近くに居てくれたことが良かったのだと思います。

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古谷 浩さん

母親が自分を責めていることを知って、病気になったことを申し訳なく思った

【古谷 浩さん(43歳)発症31歳/性腺外胚細胞腫】

がんと診断されたとき、母親と一緒に主治医の説明を聞くことがありました。そのとき、母親が「私が悪いんでしょうか」と言ったんです。それを聞いた瞬間、僕はかなり落ち込みました。主治医はすぐにはっきりと「そうじゃないです」と断言してくれたので、ありがたかったです。

でも、そういう風に母親に思わせてしまったことがわかって、初めて「病気になって悪かったな」と思いました。がんという病気を実感したのはそのときでした。

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西口 洋平さん

本人と家族では悩みの質が違うから、わかったつもりで決めつけないことが大事

【西口 洋平さん(37歳)発症35歳/胆管がん】

【妻は患者の家族として、僕とは違った悩みや苦労を抱えていると思います。例えば、僕の母は息子のことが心配で、いろいろ話をしたいのだけど本人には話しづらい。だから嫁である妻に話してくる。そんな母の気持ちを、妻は全部受け止めてくれているようです。それに、もしかしたら心のどこかで、僕ががんになったのは今までの食生活が原因かもしれないと自分を責めたかもしれないし、今は今で野菜中心の栄養バランスのよい食事を実践しなければ、というプレッシャーを感じているかもしれません。

【でも、それはすべて僕の想像です。「家族なんだから何でも話し合うべき」という意見もあるかもしれません。でも本人と家族では悩みの質が違いますから、わかり合えない部分があるのは当然です。わかったつもりで決めつけず、お互いに葛藤しているということを思いやることが大切だと思います。

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  • 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

2024年2月更新