がんとともに生きる時代。AYA世代でがんになり40歳以上になった人の居場所が欲しかった

桜林 芙美さん(41歳)神奈川県
発症 35歳/乳がん

取材日(2021年9月21日)※年齢・地域は取材当時のものです。

「乳がん」と診断され、体調不良の原因がわかってほっとした

桜林芙美さん写真

がんと診断されたのは、6年前の35歳の時です。その1、2年ほど前から感染症にかかりやすくなるなど体調不良が続いていましたが、3人のやんちゃ盛りの育児疲れだと思い、原因がわからないままやり過ごしていました。

しばらくすると、乳頭のあたりに傷ができるようになりました。黄色い分泌液が出てはかさぶたになる、というのをくり返すうちに、かさぶたにならずじゅくじゅくとしてきました。その状態が何か月も続いたので、ようやく乳腺外科を予約したのですが、予約までの2週間のうちに、ぽこっと小さなビー玉みたいなしこりが現れて、自分でも「乳がんだ」と確信しました。受診当日に「ほぼ乳がん」と診断されたときには、何より、体調不良の原因がわかってほっとしたのを覚えています。治療すればいいんだと割と早く気持ちを切り替えられました。

子どもたちに、ありのままを伝える

桜林さんと子供達の写真

私のがんは進行がとても早く、あまり抗がん剤が効かずに、急遽手術になりました。手術日が決まってからは、家族の行事やアルバイトの調整など、かなりバタバタして、自分の体に起こっていることよりも周囲のことの方が気になっていました。

治療をする中でショックだったのは、肺転移がわかった時です。HER2陽性がんで周囲も私自身も再発はないだろうと思っていたので、転移はまったくの想定外。ぽかーんと「無」の感覚になりました。脱毛や疲労感などのつらい副作用を経験したばかりで、もう一度かと思うと精神的な負担が大きくなり、子どもたちも不安にさせてしまいました。

患者会でも「子どもにがんのことをどう伝えるか」は、関心が高いテーマです。お子さんとの関係やタイミングに応じてそれぞれ伝え方は違うと思います。私は、肺転移がわかった時は「おっぱいのがんが肺にうつっちゃったんだ。だからずっと治療をするの。でもママは生きていけるから大丈夫だよ。」「がんとお手々つないで一緒に生きていくんだよ」と伝えました。

子どもは、大人のことをちゃんと見ていて、とても敏感に状況を察します。だから私は、その時々でありのままに話しています。それもあってわが家は「がん」に慣れてきて、私の治療生活も普通になっています。思春期にさしかかった双子の娘からは、時に厳しい意見を浴びせられるんです。さすがに脱毛したり顔色が悪かったり、ぼろぼろのときはわかってもらえますが、体調が悪くて寝ている時と、体調が悪くなく普通に寝ている時の違いはなかなかわかってもらえません。単にだらしない母親だと思われてるかもしれない…。これは、小さな悩みです。

「AYA世代」の先の居場所をつくりたい

生活上の小さなストレスは、趣味のフラダンスを踊ったり、ゾンビ映画を観たりして解消しています。中でも、家族には言えない悩みなどは、患者会の存在に助けられています。ただ、がん患者は置かれた状況が様々で悩みもそれぞれ違うため、がん患者同士でも話せないこともあります。若年性乳がんの患者さんでも、私と真逆の悩みを抱えていて、お互いに傷つくこともありました。そういうことを経験して、多様性に応えるコミュニティがあったらいいな、しっかりとした枠組みやルールをあえてつくらない、これまでにない患者会を作りたいなと思ってできたのが「AYA GENERATION + group. (アヤ ジェネレーション プラス グループ) 」(通称アグタス)です。

「アグタス」では、遠方からでも、体調がすぐれなくてもつながれるように、オンラインを活用しています。勉強会の後の交流会で話題になるような、何気ない会話に隠れた重要な問題や、実はみんなが困っていることをテーマとして掘り下げています。

アグタスの対象は、「小児がんやAYA世代でがんを経験した人」です。がんを経験した50歳と経験しない50歳では、気持ちの面でも身体的にもいろいろと違います。がんが治る、がんでも長く生きられる時代になったからこそ、40歳以降のがん経験者の居場所が欲しいと感じました。同時に、未来の姿が見えないことで不安を感じる小児がんや若いがん患者さんに40歳になった未来の姿を見せたい、という思いもありました。

コロナ禍で難しいこともありますが、今後はアグタスが出かけて行って五感で感じる交流会を日本全国で開催したいです。

がん患者向けの雑誌で「遠回りのつながり」を作るのが夢
将来のがん患者さんには、今より明るい世界を届けたい

代表チームミーティングの写真

患者会を運営すると、本当に必要としている人につながっているのかが気になります。コミュニティをつくっても様々な事情で入れない人もいますし、SNSで簡単につながれる反面、選ぶのが難しく一歩を踏み出せない人もいます。若い人だと、匿名の気楽さや直接かかわらない心地よさもあるようです。

そういうことから、今、「遠回りのつながり」について考えています。受診の時は、待合室に長時間いますので、置いてある雑誌を手に取ることがあります。でも、一般のファッション誌や生活情報誌には、がん患者が活用できないアイテムや必要性を感じない情報が多いんです。もしも、がん患者の読者に向けた記事—例えば、「がん患者の本音」「がん患者のバッグの中身拝見」「私の精神安定剤」など―があったら毎回読みたくなります。がん患者のための雑誌なら患者さんの多くが手に取ると思うんです。つながり方がわからない、直接つながるのが苦手という人とも、雑誌を通して徐々につながっていける、遠回りのつながりになると思います。雑誌の存在が、誰かの孤独を減らし、楽しみを増やす、読者のお手紙などで心を通わせるつながりになったら素敵だな、と夢見ています。

私自身、今も3か月ごとに検査を受けて、次の治療を決めています。いつも3か月単位で何ができるかを考えているんです。その3か月を積み重ねて、将来のがん患者さんに、今よりも明るい世界をつくることを目指しています。

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  • 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生