AYA座談会
男性が考える子作りや性について
(座談会開催日:2018年10月15日)
村井 患者会などで女性の不妊や妊よう性は話題になりますが、男性も悩んでいると思います。私は抗がん剤治療をやっているので、妊よう性に不安がある。恋愛や結婚に躊躇してしまう理由のひとつでもあります。
岸田 治療後に、妊よう性の検査はしていないのですか?
村井 していません。子どもが大好きで結婚したら当然、子どもが欲しいと思っていたのですが‥‥。
岸田 植田さんは娘さんがいるけど、白血病の治療って妊よう性に関わるんじゃないですか?
植田 僕は病気になってすぐインターネットで、がんに関する情報を読みあさったんです。最悪の可能性を考えて、ひたすら調べた。そして、抗がん剤治療の前に主治医に「将来、子どもが欲しい時にどうなりますか」って聞きました。そうしたら、「女性の妊よう性温存については調査されているけれど、男性についてはエビデンス(調査・研究による根拠)がないからわからない」って言われました。で、結局、精子の凍結保存はしなかったんです。
岸田 え!そうなんですか!?なんで?
植田 主治医に「やらなくていいよ」って言われたんですよ。妊よう性に影響しないというデータもないけど、妊よう性が失われて改善しない、というデータもないからって。
村井 精子を凍結保存する費用も安くはないですしね。
植田 そうなんです。
村井 僕は主治医から妊よう性温存をしたほうがいいと言われていたので、精子を保存しました。実際にしてよかったと思っています。
植田 今の職場に僕と同じ白血病になった人がいて、その人は主治医の判断で精子凍結保存をしたと聞きました。主治医によって違う。保存せずに後悔するのは嫌だから、調査してデータを出して欲しいですよね。
岸田 奥さんは、子どもができないかもしれないことを事前に了解していたのですか?
植田 看護師ですからね。そこらへんはわかってくれてました。
岸田 闘病中も支えてくれた人ですもんね。そして結婚して、子どもができた。
植田 はい。少し調べてみると、病気とは関係なく、「2人目不妊」というのがあるらしいですね。普通に健康な人でも、2人目を授からない。それで悩んでいる夫婦も多いみたいですよ。ひとりいるので周りからも気軽に「2人目はまだなの?」って聞かれて苦しい人たちもいるみたいです。
柿本
がんになっていなくても結婚しない人はいるし、子どもを望まない人もいる。がんでなくても不妊で悩む人もいる。一方で、がんになっても結婚して子どもを授かる人もいますよね。
実は僕、治験の関係で遺伝子検査を受けて、がんが子どもや孫に遺伝する確率が高いとわかったんです。だから、結婚して子どもが欲しいと思っても、養子縁組みや里親制度を考えるかな。今、ボランティアで子どもたちに柔道を教えているんだけど、生徒の保護者に「自分は病気で子どもを持てないから、自分の子どものように面倒をみさせて欲しい」って話したこともあります。
岸田 僕の知っている患者会の人も、医師から「子どもは望めません」と宣告されたけど、結婚して子どもを授かって、今、子育て奮闘中ですね。
柿本 僕の場合、27歳で大腸を摘出して人工肛門にした時に、腸骨リンパ節や右の鼠径リンパ節を全摘、神経も切っちゃったので、勃起障害の後遺症がのこったんですよ。「がんです。人工肛門になります」と言われたことより、「勃起しなくなります」と言われたことのほうが、ショックだったかもしれない。
鳥井 事前に言われたんですか?
柿本 ええ。人工肛門になる手術の説明で、ほかにも排尿障害などいろんな不調・障害がでると言われたのですが、何よりも勃起しなくなるということがショックで、手術の前日に脱走したいとまで思いました。
岸田 勃起しなくても、射精はできるんですか?
柿本 射精はする。でも押し出す力がないから、しばらくしてこぼれ落ちてくる感じ。
鳥井 岸田さんの射精障害はどんな感じなんですか?
岸田 残念ながら、全くもって何も…出ない…ですね…。
柿本 勃起障害の僕と射精障害の岸田さんと、どっちが辛いだろうね。
岸田 僕は勃起障害のほうがキツいと思うなぁ。
柿本
勃起障害になってもね、性欲はなくならないわけですよ。男同士だから言うけれど。27歳ですよ?気が狂いそうになったこともあります。
しかもその後、今度は陰茎がんにもなっちゃって、陰茎の一部を切除したんです。その時は本当に落ち込みましたね。男性としてのアイデンティティを取り戻すために、形成手術やサプリメントを試してみようかなって思ったり。
岸田 他のみなさんは、性機能への影響はないですか?
鳥井 ないですね。僕の持っていない性や妊よう性の悩みをここまで赤裸々に聞いたのは初めてです。
柿本 男性患者の性の悩みについて初めて話ができたのが、岸田さんでしたね。同じような悩みを抱えている人がいるんだ!ってホッとしたのを覚えてる。
岸田
そうでしたね。
患者会でも、今回みたいな男性だけの集まりは珍しいけれど、男性同士だからこそ普段は話せない本音トークができたと思います。こんな機会がまたあるといいですね。ありがとうございました。
- 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生
2024年2月更新