AYA座談会

わたしが選んだ妊よう性温存について

(座談会開催日:2019年11月2日)

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髙桑子宮頸がんの治療は子宮・卵巣・リンパ節を全部摘出するケースが多いのですが、私の場合、子宮頸部と膣半分を摘出して、子宮体部と卵巣を残す「トラケレクトミー」という手術を受けました。

御舩子宮頸がんは手術によって子宮や卵巣を摘出することで妊よう性を喪失する場合がありますが、妊よう性を温存できる手術があるということですね。

髙桑まだ、研究段階の治療法なので実施している病院も限られています。

尾崎私も主治医から妊よう性温存手術の話がありました。ただ、その手術を受けても体外受精と帝王切開は免れないらしく、再発のリスクを抱えて生きるのはつらいので、パートナーがいなかったこともあり全摘を選びました。今も全摘して良かったと思っています。

御舩価値観によって色々な選択がありますよね。でも時には複雑な気持ちになられることもあるのでは?

尾崎子連れの人をみるだけでイライラしたり、女性としての能力を失った悔しさに、ボロボロ泣きながら仕事から帰る時期もありました。

照屋私の場合、副腎皮質がんは予後が良くないので、播種性の転移がみつかり抗がん剤治療をする時も、「今後妊娠できない可能性がある」とサラッと説明されましたが、「結婚・妊娠・出産という未来のことより今を生きることが大事」と説得されました。

御舩突然のお話に驚かれたのでは。

照屋私の場合、痛みなどは全くないのですぐには状況を理解できなかったのですが、自分がそんなに大変な状態にあると言われると、親より早く死にたくないし、出産のことより親のことを考えていました。

御舩がんになる前は子どものことをどう考えていらっしゃいましたか?

照屋もともと妊娠とか出産の意識は、私の中では低かったように思います。今もフルタイムで働いているのですが、仕事と子育ての両立を私ができるかというと、周囲のお母さんたちを見ても大変そうで自分は無理かなと。

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久世私は白血病になる前に凍結保存した受精卵が残っていたので、第2子がどうしても欲しいと思って医師に相談したら、抗がん剤は一生飲み続ける必要があるし、受精卵があっても母体がもたないので、どうしても欲しいなら海外で代理母を探すしかないと言われました。苦労して保存した受精卵を諦められず、今は患者会の方に教えてもらった東京の病院に3ヵ月に1度通っています。

御舩妊娠に対する考え方が転院前と後の医師によって違いましたか?

久世新しい抗がん剤なので十分なデータがなく、前の先生には一生飲み続ける必要があると言われましたが、今の先生からは検査値がある程度まで下がれば薬を止めてもよいと聞いています。ただ、妊娠できるまでに早くても2年はかかるので、そうなると38歳になるし、ちょっと焦っています。

御舩医療者の考え方や言葉の影響力は大きいですよね。島野さんは19歳という若さで、将来の妊娠まで考えるのは大変でしたよね。

島野ネットの体験談などで抗がん剤治療によって妊よう性が落ちることは知っていたのですが、正直、その時点で子どものことは頭になく、ただ漠然と10年後には欲しくなるだろうなと思う程度でした。

御舩告知の時には、医療者からどう説明されましたか?

島野妊娠・出産については「産婦人科医と相談してください」と言われました。2日後に抗がん剤治療が始まると副作用が本当につらくて、妊よう性を考える余裕がありませんでした。2クール後に卵巣の予備能値を調べると数値が低くて「閉経寸前の値だから、抗がん剤治療が終わるころには妊娠できなくなってもおかしくない」と、先生に説得されて採卵しました。

御舩卵子凍結をされたのですね。

島野抗がん剤投与期間ではありませんでしたが、かなり弱っているときに排卵誘発のためのホルモン注射で毎日通院しなくてはならなかったことや、内診が結構つらくて。採卵は死ぬかと思うくらい痛くて、本当にしんどかったです。その後も注射の副作用で卵巣過剰刺激症候群になり、次の抗がん剤が控えていると思うとぞっとしました。

御舩産婦人科に行くだけでも勇気がいりますものね。

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島野産婦人科は出産を控えた方も多いので、頭ではわかっていてもなんだか複雑な気持ちになってしまいました。

御舩そういう配慮がなされていない病院が多くて、不妊治療中の女性と妊婦が待合室で混在してつらい思いをしたという声はよく聞きます。私も治療中に将来子どもが持てるのかと不安な中、マタニティマークを見るのは結構つらかったです。

照屋凍結卵子はどのくらい、保存できるのですか?

久世きちんと聞いたことはないのですが、破棄依頼の書類を提出するまでは保存されると思います。ただ、私の場合、毎年6万円ほどの保管料がかかります。

髙桑私も術後に体外受精と顕微受精をしましたが、個数にもよりますが保存だけで万単位のお金がかかります。

久世高いですよね。採卵、顕微受精、子宮への受精卵の移植とそのたびにお金がかかるので、何百万円になります。費用面、精神面、副作用もあるので、やはり大変です。

島野私の両親は、「今は費用は出すからやりなさい」と言ってくれましたが、今後は更新の費用も、もしその凍結卵で出産することになった場合も費用の負担は大きいと思いました。

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御舩私も妊よう性温存をしましたが、がんの治療だけでもお金がかかるのに、さらに妊よう性温存に関する費用はすべて自費なので大きな負担でした。

髙桑以前の私は仕事が第一で、子どもはいずれ何とかなると思っていました。がんになった後、複雑な家庭で育った夫がふと「結婚しても自分は家族運に恵まれないな」とつぶやいたのを聞いたとき、がんになった私の人生に巻き込んでしまって申し訳ないと思い、「この人のためなら」と自分の考えが変わった感じです。

御舩それで、ご夫婦で話し合って特別養子縁組の手続きをされたのですか?

髙桑里親や特別養子縁組の話を初めて聞いたのは手術した年の患者会でした。不妊治療を始めたのが36歳だったので、同時に治療の期限をいつにするかも夫婦で話し合い、40歳までと決めていました。

御舩期限を決められていたんですね。

髙桑特別養子縁組の手続きをしても、すぐに子どもが紹介されないことは理解していたので、40歳近くになってからは不妊治療と並行して手続きを進めました。里親は子どもが18歳になると関係が切れてしまうので、我が家は特別養子縁組を選びました。東京都の場合は里親か特別養子縁組かを最初に選びますが、自治体によって違うようです。

御舩どこで紹介を受けるかによって制度が違うのですね。

髙桑民間団体もあるようですが、自治体の特別養子縁組制度は費用もかからないし保護者へのフォローも手厚いので、私たちは自治体を選びました。

御舩里親・特別養子縁組の制度を知らない方がまだ多いように感じますが、社会的に子どもを持つことは選択肢の一つであり、新しい家族の形ですね。ただ、日本は血のつながりを重視する風潮がありますが、心のハードルはありませんでしたか。

髙桑最初はありました。ただ、里親や特別養子縁組になるにはいくつかの研修を受けるのですが、その中で制度の根本は「子どものための福祉であって、子どものいない夫婦のための選択肢ではない」という話がありました。

御舩子どものための制度ってことですね。

髙桑実際の里親さんたちとの交流でも「自分たちのために子どもを育てているのではなく、家庭を必要としている子どもに自分の家を提供している」、あるいは「保護者という気持ちで迎え入れれば血はどうでもよくなってしまう」と聞きました。血がつながっていない夫だって家族ですから。

御舩そうですね。

髙桑遺産相続に関わることなので、両親や兄弟姉妹には話す必要があります。東京都ではLGBTや外国人のカップルも里親にはなれるので、そういった方々も研修に来られています。色々な家族の形があってよいのではないかと思います。

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  • 監修:国立がん研究センター中央病院 清水 研 先生