AYA座談会

治療中や日常でのメンタルケア

(座談会開催日:2020年10月19日)

井上さんの顔写真

井上みなさんに、メンタル面の相談について聞いてみたいです。私は、主治医には「頭が痛いです」「熱が出ました」などの身体的な症状だけを伝えていました。本当はメンタル面が一番不安定で、毎日泣いて過ごしていたのですが、主治医には言えませんでした。言えば、きっと聞いてくださったと思いますが、そういうことは言っちゃいけないと勝手に思っていました。
がん患者さんは、自分で耐える方が多いようなイメージがあります。治療中に清水先生のような方にちゃんとつながっていたら、気持ちの面で救われたかもしれないなぁと。皆さんは治療中、メンタル面の相談はどうしていましたか?

三井私も主治医には言えませんでした。正直な話、私はがんの治療よりうつ病の治療の方がよほど辛かったです。主治医に話せないので話しやすい看護師さんに相談して、緩和ケアの専門看護師さんと定期的に面談しています。ウイッグの新作を買ったことや学校で起こっていることなど、病気と関係ない話をしていくことでだんだん気持ちが楽になりました。
がんの不安とか今後の相談は看護師さんと精神科の先生に話すようになりました。主治医はすごく優秀な先生ですが、どちらかというとコミュニケーションがあまり得意ではないので・・・。主治医は身体を治してもらう人、とメンタル面の相談はしませんでした。そう思った方が自分の中で楽だったので、役割を分担して相談していきながら今なんとか元気にやっているというところです。

四家私の場合は、子どもの頃から話すのが得意でなかったので、主治医に自分の状態をメモで伝える習慣がついていました。主治医は書いている内容よりもその文字の乱れ方とかで、辛さのバロメーターを測っているみたいでした。
最近、教えてもらったのですが、お薬手帳に何でも書き込めばよいそうです。この薬を飲んだらよかった、こういう不調があったというのを書いていって、話すのが辛い時はそのままお薬手帳を診察時に見せればわかってもらえます。

お薬手帳の写真

四家さんは医師とのコミュニケーションにお薬手帳を活用。

岸田四家さんのチャットに、精神看護専門看護師さんと定期的に面談します、とありますが?

四家病気をした時にかなり精神的に不安定になりました。数年経ってがんの病状は落ち着いているのに気持ちの不安定さが続いていてどうしようもなかったので、4年ほど前から、診察のたびに精神看護専門看護師さんと面談をしています。三井さんと同じで大した話ではないのですが、自分の中の気持ちの整理を手伝ってもらっています。

小磯私がなんとなく無気力だった時に、心療内科の若い女医さんを紹介されました。その先生はまぶしくて、この方に相談しても私の心は晴れない、と思ってしまいました。そのころ、他者と比較してぐちゃぐちゃしていた時だったので、その心療内科の先生と話しても全然解消されませんでした。私の場合、同年代の先生よりも歳の離れた人に話を聞いてもらう方が自分には合っていたように思います。

チャット

三井患者も医療者も人間だから、“合う合わない”がありますよね~

岸田“合う合わない”ほんとありますよね。僕は、執刀医と合わなかったので執刀医をチェンジしてもらいました。

鈴木さんの顔写真

鈴木僕の場合、がんになった年齢が14歳、18歳ということで、そこまで精神的なものはありませんでした。主治医には学校に通える時期だけを聞いていました。舌がんの時も術後にきちんと話せるかが気になっていました。メンタルケアの先生とは「大丈夫ですか?」「はい、大丈夫です」という感じでした。


チャット

小磯鈴木さん!!メンタル強くてうらやましい~

鈴木多分メンタルが強いんじゃなくて物事を深く考えないただのバカなだけなんじゃないかって思ってますね笑

小磯考えすぎないこと大事ですね!!何事も、~しすぎは良くないですもんね!

岸田そうですね。「~しすぎ」は何でもよくないですよね。

井上みなさん、ありがとうございます。精神科の先生や看護師さんなど身近に相談できる方がいらしてうらやましいなと思いました。そういうところは施設格差、地域格差がまだあると感じました。
鈴木さんのようにAYA世代でも、特に若い世代に罹患した人のお話をうかがうと、学校に戻れるか、友達との関係、親との関係などに悩んでいて、AYA世代でも年齢によっても悩みが違ってくると改めて感じました。

清水自分で解決される方もいるし、誰かに話したい人もいます。医療者はもっと力になりたい気持ちがたくさんあるので、遠慮せずに声をかけていただきたいです。辛い気持ちの蓄積というのは誰かが力になったからといって大きく変わるものではないかもしれません。でも、辛い時に自分の気持ちを話せる、わかってくれる人がいるというのは大きな力になるんだろうなと思います。それは医療者かもしれないし、家族、患者会、ピアなど、人によって相手はいろいろでしょうね。

井上一段落してみると、医療者の方が患者さんのために何かしてあげたいって思ってくださっているということがよくわかりました。だからこそ、どうにかして医療者と患者さんの気持ちが繋がらないかな、一番助けが必要な時に繋げられないかなと、常日頃感じています。

岸田小磯さんからみなさんに聞きたいことがあるようですね。

小磯本当にやる気がでない時に何もやらなくなってしまいます。“今日は、もうやる気ない”という時に、みなさんはどうやって一日を過ごしているのか知りたいです。

鈴木辛くなった時には入院当時のことをすぐ思い出して、「あの時より辛いことはないんだ、ないんだ」って念じながら仕事をしています。どんなに辛いことでもあれより辛いことはない。今ここに生活しているだけでも幸せなんだぞって思いながら生活するようにしています。

四家さんの顔写真

四家やる気のない時はやる気のないまま。食器を洗うのが面倒な時は不潔にならない程度に溜めておく。起き上がりたくない時は、これは休みの日だけではありますが、布団から出ない。心の声を聞く、ですね。

小磯なんかうれしい、私もそういう感じです。

三井私は逆にヘアメイクします。すごくダメな時は猫とゴロゴロするんですけど、ちょっとダメな時は逆に自分の気分をあげたいので、インスタ用にヘアメイクしてバリっと1回自分を仕上げてみて、気分を上げてちょっとお散歩して家に帰ってよく寝る。

井上やる気がない時はもうひたすらダラダラ。誰にも会えないような状態で過ごします。でも、今の三井さんの話のようにメイクするとちょっと気持ちが上がるから、ちょっと出かけてみようかなっていう気にもなりますよね。時と場合かもしれないですね。たまにはダラダラゴロゴロするのもいいと思うし。自分を甘やかしてもいいんだって思うようになりました。そんな必死で頑張らなくてもいいって気がついたので、楽になったんだろうな。

清水「それだけがんばったから疲れているんだ。無理に明るくしようとする必要がない。」やる気がないことをダメと思わないことが大切なのではないでしょうか。やる気がないのは、その分がんばったから心が休むことを求めているのだと思います。四家さんの意見に賛成です。


―最後にひとこと―


小磯今日は、同世代、AYA世代ということと心地のよい雰囲気の中でお話することができたので、すべてさらけ出してしまった感があります。恥ずかしいことも言えてしまった。みなさんがうなずきながら聞いてくださったので、心がさらに軽くなりました。いろいろな思いでみなさんも過ごされている中で、今、笑顔があったり前向きに過ごしたりしているとわかって、また明日からの自分のやる気につながっていくなぁ思いました。
やる気がない時にちょっとヘアメイクにチャレンジしてみようかな、リップでも買ってみようかなと思いました。やる気がない時は気張りすぎないで、「気張りすぎない」という言葉が素敵だなと思いました。今日、みなさんに元気をもらえてすごく幸せな時間でした。ありがとうございました。

四家病気から長い時間がたって、一時期は気張ったり、小さなことでくよくよしたり、欲張ったりしちゃうことも多いんですけど、「生きてるだけで幸せ」「生きてるだけでうれしい」そんな大事なことに気づかされた2時間でした。ありがとうございました。

鈴木さん、観戦時の写真

休日は、スポーツ観戦やフェスに出かけます(鈴木さん)

鈴木2時間ありがとうございました。今まで「死にたい」とか「再発してよかった」と思ったことが一回もなかったので、その裏側、そう思う理由はなんだろうと考えていました。そこまでの壮絶な選択や感情をもたらす「がん」というのが、あらためて憎いやつだなと思いました。
やる気がない時は頑張らなくていいかな、と。「もう。頑張ったもん!」ってことで。僕の場合は、ヘアメイクではなく髪の毛をセットしてフェスやスポーツ観戦に出かけたいと思います。

三井鈴木さん、ヘアメイクしてみてください。楽しいですよ。今日お話ししてみて、考えていることは似ていると思いました。
私がこれからやっていきたい子どもたちへのがん教育は、“がん”を教えるのではなく“生き方”を教えていく教育だと理解をしています。例えば、「受け入れたらすごく生きるのが楽になるよね」など名言がありました。子どもたちにはがんという病気は経験して欲しくないので、経験したみなさんから得た言葉の数々を貯めておいて、子どもたちに伝えていきたいです。

笑顔の三井さん

個人的なことですが、“5年生存率5%” から這い上がってきた小磯さんの存在は、私にとってすごい希望になりました。私は4カ月前にステージⅣの告知を受けた時に“5年生存率33%”と言われ、33%に入れるかが不安でした。でも、今日、実際に“5%の女”に出会えたので、私も大丈夫かなと思えました。ありがとうございます。


チャット

小磯主治医の先生も、稀なケースだと言いました!

三井私も、稀になります!

小磯奇跡を起こしましょう!!

三井はい!

小磯私も元気をもらいました。ありがとうございました笑顔アイコン

三井笑顔アイコン

井上病気という深いところがスタートで話をしていくので心を開いて、初対面でも打ち解けるのが早くて、すごく楽しい時間でした。がんになっていいことなんて何もなかったと鈴木さん、三井さんもおっしゃっていましたが、私も、今もがんにならないで済んだ人生を歩みたかったって思っていますし、もし時間を戻せるなら、がんになる前の体に戻りたいとずっと思っています。
でも、自分がこのがんになったことによって、病気にならなければお会いできなかったみなさんとご縁が繋がって、やっぱり生きているって素晴らしいなと本当にシンプルに思えました。今日、出会えて本当に嬉しかったです。ありがとうございます。

岸田様々な人がいて、多様な経験がありましたね。受け入れざるを得ない状況になると、自分の考え、思いがみなさんの価値観に反映されてきていると思いました。素敵な時間が持てて良かったなと思いました。

清水がんの体験者の方の感じられていることは、世の中を変える力があると思っています。今日もそういう言葉がたくさん。いままでの生き方があるからこそ名言が力を帯びているのだなと思いました。
初対面で、オンラインということで実際にお会いしていませんが、すごくあたたかい雰囲気の座談会となりました。これからもつながっていけたらうれしいです。ありがとうございました。

座談会参加者の写真
  • 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

2024年2月更新