AYA座談会

これからの生き方について

(座談会開催日:2019年11月2日)

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御舩みなさん、これからの生き方をどう考えていますか?

久世きちんと病気を治して再発せずに子育てをしたいと思っていますが、1番の望みは2人目です。一般に世間は、結婚していない人には「早く結婚しろ」、結婚すると「子どもはまだか」、などと、本当にうるさいですよね。私はそれが嫌で、自分の人生は自分のものだから、自分で決めていきたいと思っています。

髙桑がんになって、なくしたものは多いけれど、得たものは未だにないという感じです。ただ、人生には変えられることと変えられないことがあるので、自分でコントロールできる部分は頑張っていこうと考えが変わりました。今、私が大事にしているのは家族。お正月や父の日、母の日、誕生日、と実家に帰る回数が増えました。それと、自分でできるちょっとした楽しみをみつけながら、夫と共に日常を大切に暮らすことを一番大事にしたいです。

尾崎「えっ」と思われるかもしれませんが、私は自分ががんになって良かったと思っています。子どもは産めませんが、新しい生き方を知ったり、がんになって悲しいことだけでなく色々な発見がありました。この経験を伝えることに意味があると思うので、そうした情報発信ができる役割を担えられたらいいなと思っています。

御舩自身の経験をきちんと言葉にして伝えられる、その力は大きいと思いますので、ぜひ色々な活動を拡げていって欲しいです。

尾崎もちろん病気を隠したい方もいらっしゃると思いますが、口に出して楽になることも多いと思います。色々な患者会に参加して、病気になる前はわからなかった人の温かさ、距離を置いてしまっていた家族が一番の味方であったことに気づきました。母は今も「貴方の人生だから好きなように生きればいい」と応援してくれて、本当にありがたいです。

照屋私は実家が遠いこともあり、初回の手術まで両親だけでなく周りの友だちにも告げていなかったのですが、4回目の手術以降話すようになりました。そうすると高校や大学の友人もわさわざ飛行機に乗って見舞いに来てくれたり。「病気になって良かった」とまではいえませんが、疎遠になっていた友人とも本音で話せるようにもなりました。現在だけでなく未来も楽しめるよう、パートナーや周囲の人からも大丈夫とみてもらえるよう、頑張りたいと思っています。

島野私は治療もつらかったですが、友だちが大学生活を謳歌している中、病気によって受験も延期せざるを得なくなったり、数え切れないくらいつらいことがありました。でも、今では、この経験は必要だったと思えるようになりました。

御舩お友だちとの関係は?

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島野やはり周りの友だちは学生だったり働いていたりと、環境の違いから中々連絡が取りづらくなってしまいましたが、患者会で新しい友だちもできたし、がんの私が笑っているのが不思議だと言いながら友人がなんだかんだと相談に来てくれて、そうやって元気を与えることができているみたいなのでよかったです。

御舩それは、うれしいですね。

島野がんになったことは本当につらかったですが、がんになってしまった人のために何かできることがあると思うので、そうした気持ちを大切に私も何かできたらいいなと考えています。

髙桑治療自体よりも精神的なことで、がんになる前の生活と違ってしまった戸惑いが結構あると思います。そんな不安や戸惑いを話せる場所が必要かなと思います。患者会では患者同士の話はできますが、そこに医療者が入ることは非常に少ないですね。医療者に私たちが日常で困っている状況を認識して欲しいですね。

御舩同感です。

髙桑特にAYA世代は就職、結婚、妊娠、出産と一番イベントが多い時期で、悩むところも人それぞれです。治療が終わったから大丈夫という訳ではなく、日常生活を取り戻すための支援がもう少し必要かなと思います。

島野若年者はシニアに比べて副作用が出やすいと聞きました。でも、AYA世代は患者数が少なく、医療者の経験も少ないせいか、そうした違いを認識してもらえないことも多いようです。男性の医師だと妊よう性温存に関心が少なかったり、という声もよく聞きます。

御舩確かに、そう感じることがありますね。

島野また、がんになっても働けるように就労支援が進んでいるのは良いのですが、副作用で働けない人、今までとは同じように働けない人もいる中で、就労支援さえすればみんなが一律に働けるという誤解もあるように思います。

御舩若いからこその悩みを抱えているAYA世代の患者への支援は、まだまだ必要なことがたくさんありますね。がんを経験した後も、本来自分自身が持っている力を発揮して生きられるよう、その支援が充実することを望みます。今回、がん腫の違う方が集まってこのようにざっくばらんに本音を話せる機会は非常に少ないので、本当に色々な意見が聞けて勉強になりました。それぞれのこれからの人生を応援し合っていきたいですね。ありがとうございました。

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  • 監修:がん研有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

2024年2月更新